テキスト1987
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花器黒色柑水盤吟令。蒲は雄花穂が散り、雌花穂が茶色董の間この睡蓮も、ばっちり聞いていたのだが、写真をとる頃にはおやすみの時間になったのか居睡りはじめた。いくら照明を明るくしても験を閉じるように花弁がつぼみはじめる。ゆり起こすわけにも行かない。撮り終って階下の床の間に運んだ頃にはすっかり閉じてしまった。「おやすみなさい」といってやりたくなるほど可愛いものである。睡蓮をいける楽しみの一つはこういうところにある。又睡蓮は他のすべての花のような立体構成ではなく、真、副、留の三枝を平面に構成するところにも面白みがある。立体である筈の生花を平面に、つつしかえて何となく満足してしま、つのは、こじつけるような気がしないでもないが、その出生の自然きも失わず美しい構成である。一種挿しもよいが、他の背の高い水草の下にいけあわせると、立体と平面の対照が動と静のよ、つにきわ立って感じられ、池の端の涼しさの中に件んでいるような気分をさそわれになる8月頃の蒲の姿が絵にもよく描かれており、一般的な印象となっているが、私はまだ穂も緑色で葉の青々している6月中旬から7月初め頃の清々しい蒲を好んでいけている。睡蓮蒲6

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