テキスト1987
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けじけそう一は〈ますりがりす〈色調について〉自然のままの植物を使う限り、白、黒、灰色だけで構成される水墨画や木炭画のような無彩色のいけ花はあり得ないが、葉蘭の生花のように緑一色で構成したり、或はモノトーンとは云えなくても強い色を避け色数もおさえた渋い色彩構成をとった作例のようないけ花も考えられる。煙草(白熊の木・スモークツリl)は花が終り、は、名前通り空中を漂う煙のような感じで、遠目で見ると灰色のぼんやりした形だけで、はっきりした色彩は感じられない。こういう花材には、普通強い色の花を前面に押し出して色を浮き立たせ、或は煙草の後に挿して色あいをやわらげながら色調をととのえることが多い。この作例の煙草も灰色に近い色で、その下になった葉は灰色がかった暗い陰影のように見える。花器は無色め磨硝子の花瓶なのでこのとりあわせの中で、色を感じさせるのは鹿の子百合の赤い斑点だけで、調子を渋くおさ、えている。又形の上でも花器の口の左上をあけて茎だけ二本見せ、その下にそっと挿した鹿の子百合が色調のおさえ役として大切な一輪となっている。花器花材煙草黒い実ができる頃に鹿の子百合臨硝予カット入り花瓶〈表紙の花〉表紙に使った貰花鋸PB司草そA,のことを調べていると、一八八七年渡来主記きれている。故郷のコ|カサス(ソ連南部)からヨーロッパを経て日本に至る長い旅を終え、私達の風土に住みついて丁度百年になるのである。大して珍重もきれない花だが、そう思って眺めると、少し上等なとりあわせでいけてやりたくなって、アロエ・ミトリフォルミスを一鉢買い、花器は、故近藤豊氏の白斑文の少し変ったのを選んでみた。いけ上がってみると中々良いいけ花である。アロエ・ミトリフォルミスの豊かな緑がかきついた鋸草の花や葉に潤いをあたえているような感じで、余分な色彩もまじらず、すっきりとしている。アロエ・ミトリフォルミスはl/3ぐらい残して切りとり、下部の葉を6枚ほどはずして切口が水につくようにして少し前に傾け、頂部が前から見られるようにいける。黄花鋸草は左右に長く、真中に入るものは少し低目に挿して横への伸びを除Eたせる。両方とも水揚げの良い花材なので水をかえるのを忘れがちだが、夏の聞は毎朝手入れしてほしい。花材黄花鋸草アロエ・ミトリフォルミス花器白斑文花瓶2

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