テキスト1987
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あや的あや的江戸時代の本草書や花伝書を見ると、あやめは、渓諜・蘭諜・菖蒲の他に抑制静静和、たまに水宿・昌陽とも書かれている。菖蒲と書いてあやめと読む場合、あやめ行型花器白青磁水盤一応あやめ科の美しい花の咲くあやめということになり、菖蒲をしようぶと読む時は、里芋科で花らしい花は咲かないが端午の節句に菖蒲湯に使う芳香のある、正しくは漢名白菖という水草を指すことになっているよ、つである。その上ややこしいことに、白菖のことを古歌ではあやめとよんでいるのだそ、つである。「いずれかあやめ、かきっぱた」という語は、その花の美しきの優劣つけ難さ、或はその姿の相違の判然としないことを意味しているが、二つの花を知ってしまえば簡単に見分けはつく。だがそれよりも、古歌や古文に文字で、「あやめ」、或は「菖蒲」と書かれている場合、それをあやめ科の美しい花を指しているのか、里芋科の白菖の葉の群がる文目模様を意味しているのか、挿絵でもついてないかぎり古文や植物学史によほど詳しい人でないと、はっきりした断定が下せない不便な名称なのでそれなら、いっそのこと学名で、という意見もあり、植物μ主告もすすめているが、「イリダセアエ・イリス・サングィネア・ホルン」の生花をいけよう、では可笑しくて菖蒲をいおかあや的ける気にはなれない。古文や花伝書に出てくる「菖蒲Lをその前後の情景に応じて、時にはしようぶと読んだり、紫色のかわいい花を自の前にうかべてあやめと読んで、季節を想うのが私達花をいける者の心情であろ、っ。私も自分のいけたあやめを絵に描いて、少し気取って「渓謀生花図」などと題名をつけてみたいのである。〈あやめ〉7頁図②あやめの花茎は細い上に、中空で、葉も薄く幅がせまいので、剣山にも七宝にもとめにくい花材である。葉組は菖蒲科一般に準じて形をととのえ、花は葉組より高く使う。胴或は留等前面に見、える葉組は、自然のままを組み直さず使って水際をととのえたいが、作例では適当な高さの葉がなかったので上部を手でもぎとり、虫喰い葉を作り、その後の葉で形をとっている。γ。。ゑ6

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