テキスト1987
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花材花器有薬(白・ピンク)桔梗海芋ボヘミアングラス水盤有薬はとりあわせの難しい花材である。軽くしなやかな感じの青葉の枝物花材との二種いけならまとめやすいが、草花といけあわせると、有薬の大ききと華麗さに圧倒されて大抵の花がひき立たない。作例には自の有薬一輪に対して、三本の濃ピンクのうち一輪だけ開花を使ったが、これだけで相当強い色彩である。そこでその重量感をやわらげるため、五本の海芋を立て、更に右横におとなしく桔梗をそえ、ガラス器を使って涼感を求めてみた。ブロードウェl・ミュージカル2年前、日本に来ていたブロードウェ1・ミュージカルを、にいったことがあるが、その帰り道で「期待したほどのことは無かったね」と話していたのを覚えている。それ以来、なんとかして本場のミュージカルを一度見てみたいと思い続けていたので、ニューヨークでは4つのミュージカルを見てきた。道が碁盤の自のようになっているマンハッタンを斜めに走るブロードウェーには、スクエアを中心に、場かあり、またマンハッタンのあちらこちらにおよそ200軒の中小の劇場が点在している。それらの劇場では、ミュージカルばかりでなく、古典劇、前衛劇、コメディー、バラエティーショーなども盛んで、観客が少いとつぎつぎにけずり落とされるシビアな世界がそこにはある。夜のタイムズ・スクエアあたりは、各劇場から出てきた着飾った観光客でごったがえし、周囲には、その界隈にたむろする変な連中が、獲物を探してうろついている。劇場のすぐそばに、ブロードウェ!の華やかさとは対照的な雰囲気があるのには驚ろかされた。ミュージカル「キヤツツL装飾は説りに凝っている。古タイ42丁目のタイムズ・40軒ほどの劇和則・楼子2人で見の舞台ヤ、コlラの缶、くしゃくしゃの新聞紙、薄汚い靴、ビール瓶などが、みんな拡大されて、ステージから客席まで、足元、壁、天井と、いたるところにびっしり埋めつくされている。まるで猫の世界に迷いこんだような錯覚をおこきせるように、裏街の猫のすみかを、再現してある。そして四方八方から猫達が現われてくる。各劇場内には、スタンドパーがあり、上演前や幕開に、カクテル等が飲めるようになっていて、観劇の楽しみの一つとして、とても酒落ている。日本でも昔から、茶屋を通して桟敷席で歌舞伎を見るという、粋なスタイルがあったのに似ている。ニューヨークへ来て、やっと本当のブロードウェlミュージカルを見られたような気がした。それは、日本で見た時には無かった本場の劇場内の雰囲気のせいだろう。そして又、タイムズ・スクエアの退廃的な現実の生の姿が、私達の感動により強い印象を与えた。同じものを見るのでも、周りの環境や雰囲気で、これだけ感じ方が違うのである。いけばなも、まわりの演出によっては見る者にそのうるおいをより強く与えることができる。ただ花をいけて、どこでもいいから置いておくというのでは花が可愛そうである。何にでも一言守えることだが、雰囲気を演出することが、非常に大切なことなんだと改めて痛感した。薬4 9

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