テキスト1987
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第三種郵便物認可桑原専慶流いけばなテキスト加号昭和白年5月1日発行(毎月1回1日発行)桑原専慶流家一光発行私達は随分多くの花をいけていても、花の姿と共に香りまで楽しむことは案外少ないようである。身近な香りの花、といえばまず秋の釘村田中を想いおこすか、ライラック(リラ)も木犀科のわ村である。花材として手にするライラックの香りはかすかだが、ヨーロッパや、北海道のような冷涼で温度の低い地方ではよく育ち、芳香も強いようである。花の色は白からピンク、薄紫から濃紫まであるので、二、三色一緒に使って他の花ととりあわせたい。作例にはみずみずしいゆ釈と、出はじめたばかりのカラジュームの葉をそえ、初夏に向かう五月に求められる爽やかさ、を考えて花器もピンク調のコンポートを選んでいる。ライラックの花は誰にでも好まれるような優しく、美しい姿をしているが、枚ぶりは直線的で単調なものである。だから花の高きに変化をつけ、前後の奥行、左右の聞きを充分にとって、のびやかに立ち上がる海芋をそえれば、ライラックの単調な枝ぶりが、小細工の感じられない爽やかさとして生きてくる。花材ライラック白・紫海芋カラジューム花器淡紅色コンポートフイラック1リラ定価五OO円

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