テキスト1987
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まあ小きな花をつけ、細い枝の先が地を骨るように風に膨く、春の山吹は秋の萩と好一対の日本情緒豊かな花である。そして共に水の揚がり難い花材だが花が咲きはじめると一度はいけてみたくなる。作例は五月らしく、山梨と白百合をとりあわせ、自然風な盛花とした。山吹は深い水で充分水揚げをしてから手早く、のびのびとした形をとり、他の花材とも充分間合いをとって、こみあって重苦しい形にならないよう気をつける。花材山吹白百合山梨花器座褐色紬水盤座禅草は四、五月頃寒冷な地域の湿地に、柱状の花茎が焦茶色の仏焔琶に包まれて咲く。従来は自然生のものを山で見付けてきて使っていたので、ごくたまにしかいける機会がなかったが、近年栽培されるようになって手に入りやすくなった。地味な花なので小品で作例のようなとりあわせ、或は新緑を豊かにそえるのもよい。花材座禅草椿(岩根絞り)花器染付水盤禅早山を越えた様々な現代アlトに、じかに触れることができたことは、私達二人にとって大きな収穫であった。アーティストの個々の感性が、ダイレクトにぶつかってくるのである。おそらく我々と同世代の若者も多いはずであろうが、彼らのそのエネルギッシュな才能は、ソーホーをはじめとする肥えた目を持つ画廊のオーナーによって発掘されてゆく。そして、まだまだ歴史の浅いアメリカン・アlトゆえに、それを育てようとする市民の土壌の中で、支えられきらに世界へ飛びたつことができる。才能ある者を、決して埋もれさせておかないような、そんなパワーをニューヨーク全体に感じてくることができた。これからも、もっともっと自分の感性を磨いてゆかなければ。そして又いろんな人と、感性を刺激しあうことの大切きを痛感する。ソーホーの画廊で、強烈なパンチを食らい、自の覚める思いがした。日欠9

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