テキスト1987
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葉蘭生花器煤竹寸筒そろそろ葉聞の花の咲く季節となってきた。観葉組物として、ごく身近なものなのに、地面にへばりついて咲く、くすんだ紫色の小さな花を見る人は少ない。植物学の上では従来中国が原産地で、中国から日本に渡来したものだというのが定説になっていたが、最近日本にも自然分布していたことが証明されている。そして面白いことに葉聞は、日本列島もその一部である照葉樹林帯ーヒマラヤから中国を経て、日本南部に至るlにのみ分布し、そこに生じた独特の農耕文化である照葉樹林文化を営んでいた私達の祖先も、古代の中国人もこの広く艶々した葉を大いに利用したに違いない。現在でも日本料理にはっきもので、葉蘭細工は板前の腕の見せ所の一つでもある。いけ花においても伝統的な花材として生花では最も大切にされており、生花は葉蘭にはじまって、葉蘭に終るとまで云われている。葉蘭の生花は葉の陰陽の組合わせの難しいもので、正しい姿にいけようと思っと、大葉、中葉、れぞれ陰陽を、いけこむ葉数の二倍は揃えておかなければならない。良い葉附が手に入りにくくなったが、それでも時々稽古すべき花材である。花葉蘭小葉のそ会主3

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