テキスト1987
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薮椿おめけぼのいわね花器黄土色紬花瓶Bν 霜の降りはじめる頃から桜の散り終るまでの、およそ半年の問、次から次へと約千種以上の椿が咲くそうである。そのうち私達がよくいけ、名前も知っているのは、曙椿、岩根絞り、乙女椿、控訴獅子、白玉椿、清緋椿、妙蓮寺椿、佑助、そして薮椿等ごく一部の品種にすぎない。椿はいけ花として最もよく使われる花材の一つであり、又とくに椿が好きだという人も多い。そして、数々の椿、又珍しい椿をいけているうち、いつまでたっても飽きないのは素朴な薮椿であることに気付く。薮椿は花の味わい深きと共に、山野の自然の中で育った枝振にも魅力がある。生長のおそい椿は、相当の年月を経ないと樹形が整わない。従って樹齢の若い珍種の椿は、いくら花が美しくても大きく枝どりできなその点、日当りの良い所で育った大きな薮椿だと、太枝一本で生花の主材にできるが、枝葉の整理に経験と技巧がきびしく要求される。生花の場合開花は、胴、或は総固に低〈配置すると落ちつきが良いが、それにあまりこだわらず、枝振や、葉のっき方の思いがけない変化を適確にとらえて見所としたい。作例では、左に出た留は枝先が右に返り、視点が上下左右に変るにつれて微妙な動きを見せる。か〈らせいひ6

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