テキスト1987
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木瓜紅白花器青銅薄端年月を重ねた老木を、ためつ、すかしつ眺めながら、その姿の中から生花の形をどうとり出すか考えているひと時は実に楽しいものである。この生花に使った木瓜は、根元の太い所が直径4でもあり、屈曲の著しい古木である。充分枝振を見きわめ、そえて行く他の枝とのあわせ方を計算しながらいけ上がりの姿を想定する。副う筈のない枝を無理に副わせようとして折ってしまったり、枝先の形のよきだけ見て、水際になる部分に考慮が行きとどかないと、折角の枝も生かしきることができない。生花に無理は通用しない。携めたり捻ったりすることは最少限度にとどめたい。枝々の合わせ方に無理を重ねると決して姿はよくなりはしないし、無駄な労力を長時間かけることによって、どんなにしっかりした枝物でも生気を失ってくたびれはてた生花になってしまう。よく枝を見きわめず、いけにかかってから時間をかけるよりも、いけにかかる前に枝をたしかめることに充分時間をかけた上で枝とりをはじめ、あとは一気にいけ上げるのが賢い方法なのである。作例には白木瓜の古木に朱木瓜をとりあわせてみたが、複雑に枝を張る花材を整理しすぎると持味を失ってしまうので、余分と思える遊びの枝を残しゆとりのある姿をとった。6

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