テキスト1987
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龍梅松花器黒色陶花瓶花道家に、「一番好きな花は?」と質問すると、大半が「梅」だと答えるそつである。私も時々聞かれることがあるが、いつも吐嵯にこたえられなくて、質問された季節の花の名前を云ってから、椿、水仙、梅、杜若、蓮等色々な花の名前がでてくる。横から素子に、「鉄線と違つの」と云われるとそうかも知れない。反対に、「嫌いな花は?」と質問きれても答えようがない。苦手な花はあっても、嫌いな花があってはならないと思いこんでいるのである。梅は私も大変好きな花である。だが私の前には、古来梅を愛した名手達のいけた梅の名作が大きく立ちふきがっている。そう思っと梅は中々むつかしい花材である。先代の著作「専渓生花百事」にも梅の生花が数点掲載されている。とくに紅梅の一種挿しは、梅の古雅な風格を充分とらえた力強い一作である。これは父が七十九才、晩年に至ってようやく型を離れてのびのびした心境を得たことの喜びをいけ上げたものだろ、フ。早春、梅をいける季節がめぐってきた。手頃な太きの雪罷梅(翫銃一献)が手に入ったので、上品にいけてみようと、松の小枝をそえ、花器も古風なものをえらんだ。水際をまとめるのに苦労したが、いけ上げて飾ってみると早春の冷気が快い。’三T壬コエコt6

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