テキスト1987
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秋から晩春まで、私達は様々な椿の花とのつきあいが続く。私の家の庭でも、晩秋白佑わび助すけが咲きはじめてから、最後の赤椿が咲き終るのは五月の初旬である。その問、随分沢山の椿を見て過ごすのだが、余程勉強しない限り品種名を正確に云いあてることは無理なようである。上の作例に用いた椿は、淡いピンクの大輪種場」である。京都では十二月下旬から咲きはじめ、ぼってりとしたふくよかさが好まれ、葉の色も形もよい。椿をいける上で気をつけたいのは、葉の状態である。品種によって、新葉のうちから葉の駄が波うつて一町り返り枯れかかっているように見えるものがあり、佐助のように葉のつき方が少なくて大変いけにくいのもある。又反対に葉がよくても、花に上品さの感じられない品種もある。椿の葉の美しいのは、秋から寒中で、四月になって、新葉の芽が大きくなりはじめると古葉の色があせはじめ、勢いがなくなってくる。そんな枝にいくら良い花が開いても、いけ花としては潤いのない干梱びた感じを人にあたえることになる。日本で生まれ、日本で多数の栽培品種の作られた椿は一種の文化財である。大切にいけたい。うるおひかり雛日主器干粟しや鬼嬰粟がある。古くからいロ月、1月と古典的な表紙になったので、2月号では少し明かるく、アイスランドポピーを主材に、三光松をあしらってみた。アイスランドポピーの他に切り花として使われている嬰粟の仲間に、け花にも用いられ、江戸時代の生花図に雛器粟も出てくる。日本に嬰粟がいつ渡来したかはよくわからないらしいが、桃山時代に多くの嬰粟の花の絵がよく描かれているところを見ると、その一時代前の室町時代には栽培されていたようである。花材として花屋に出まわってくるのはロ月からで、明かるく華やかな色の花を、暖房のきいた部屋の中で見ていると、外の寒さを忘れてしまいそうな感じがする。アイスランドポピlは、他の花材ととりあわせ、多種いけにするよりも、その多彩な花色を生かして、緑の葉だけをそえていけたい。この花のほっそりした茎の線や、繊細な表情の花弁は他の花の聞におくと、弱々しすぎるように思フ。薄い花弁は散りやすそうに見えるが、案外日保ちする花材でもある。花材アイスランドポピl三光松花器黒褐色柑壷〈表紙の花〉棒ひL椿花材H署花器中近東産花瓶2 •

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