テキスト1987
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鋭ぃ稜線でつなかる氷のような日本アルプスの壁面を背景に‘廷印紐そ曽の樹冠か蒼天につき出ている。樹冠というより槍のように鋭い梢が20Mはど下の樹林を見おろしている。さえぎるものもない風雪にたたかれ‘枝は風下側にしか残っていない。こんなきつい自然の中に芽生えた一本の大白桧曽の幼い命か、どのような力で樹林の上に真直ぐ幹を立ち上からせたのか。冷え冷えした高山の大気の中で眺めていると神々しいといってもいいほどの気高さを感じる。だかいくらその件いを心に刻みつけて山をおりても‘花瓶の上に再現できるのはほんの少し形をなぞらえてみるぐらいのことで、風格には及びもつかない。樅の一種を使って猿取茨をあしらってみたか、深山の気制を伝えるには未だ程遠い一瓶である。花材即猿取茨花器黒釉花瓶街路樹のプラタナスは落葉する頃には枝を切り払って‘冬の間は瘤だらけの太い枝か寒風にさらされている。プラタナスという名称とは別に‘八表紙の花>八2頁の花>さるとり社・52

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