テキスト1987
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と「ノ二ま時候の挨拶も、八月八日の立秋から、一応残暑ということになるが、街の中の暑熱は一向に衰、えず、郊外の炎天で元気よく真夏の太陽を浴びているのは向日葵ぐらいのものだろ八月中は、「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ驚かれぬる」という歌を何度暗請してみても、残暑見舞を何通いただいても一向涼しきは感じられない。九月になって、やっと秋口に立ったかなという気分になる。朝の微風の肌触わりも、日中の空の青きもたしかにちがってくる。そんな日が続いているかと甲山γっと急に真夏日を想いおこすような暑さが舞い戻ってくる日がある。そんな暑さを残暑というのだろう。ひ毎年八月の末になると、陽差しの衰えを惜しみながら九月を迎える。洛南の城陽市の周辺には杜若が沢山栽培されている。八月には湯のような池の中で、夏の杜若の花が、すらりとしたお姫様のよ、つな姿で汗もかかず上品に咲いている。その杜若も九月になると、小さな実が次第に大きくなりはじめる。白い鉄線の花をそえて、うつり変った季節の爽やかさをいけてみた。花材杜若の葉と実白花鉄線花器瑠璃色独楽形コンポートざ残暑10

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