テキスト1986
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そめつりそろそろむし暑くなってくると、染付の花器がよく使われるようになる。陶磁器の中でもとくに染付が好きだという人も多い。花掠としてもつややかな真白な肌に藍色の鋭く張りのある文様をあしらった水盤や花瓶はガラス器より清治な感じのするζとさえある。鉄線の花が給付けされた乙の水盤は昭和初期の京焼で、父が若い頃買いいれたもので、稽古にも使われ、何度もいけ花展に山されている。その間一体何作の花がいけられてきたかと思うと相末には扱えない。花畠蒲は紫四本、白二本、葉は二、三枚ずつ組んで水際の前面の形をととのえておく。やや左寄りにいけた花菖蒲の右下に三本の巧薬を高さをちがえて挿し加える。左側に挿した花菖蒲より色の強い濃紅色の勺薬をとりあわせて色彩のコントラストをきわだたせ、怪くのび上がる花菖蒲と、それにくらべて重量感のある巧薬はうずくまるように低く、それぞれの花の持味通りいい糸同にいけたのが乙の作例である。なお奥行をとるのに庭の蕗の葉をそえた。染付の花器には新しい水を充分いれ水と共に涼感を呼ぶ六月の盛花の一例である。北材花菖蒲(白2本・紫4木)蕗の葉(2枚)刊勺薬(3本)1C ~* 鉄線文様染付水盤9

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