テキスト1986
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がせいたい, 静かな山村で永い年月の問に何世代もいれかわる人聞の営みをみつめてきた梅や桜の古木には何か私達の知らない深い知恵をもっているような気のすることがある。この葉桜の生花は、生花というより雅整体に近い。雅整体は大正時代にその頃曜んになりはじめた盛花や投入に刺激され、幕末以来定型にはまりこんだ生花に文人的な雅趣をとりいれて新しい様式を求めようとした花型につけられた名称である。そして文人的な気分を生花で表現するには曲のある古木を素材に用いるのが最も適しているように思われる。そのような意図でいけたこの作例は雅整体風な生花ということができる。各枝の配置は極端にくずきれているが、強いてあてはめれば左の図のようになる。④が本来の副のふり出し口であり、④⑤は直接つながってはいないが⑤は副の先端のくる位置にあり⑤は内副、留と控は定位置にあり、真、副、留の構成だけは残している。4

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