テキスト1986
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つるグロリオサの真紅の花が一般化して五年ほどになるだろうか。十五年ぐらい以前はオレンジ色の花で現在のグロリオサのような迫力のある色彩の品種ではなく、手に入る量も少なかった。近頃では一年中手に入るので時々稽古Kも使っているし、テキストの作例にもよく出てくる。使い方としては二種挿しにしている乙とが多い。グロリオサの強い色と鋭い花の形は他の花の持味とはあいにくいようである。そこで麦、松、枝垂柳、松のような緑との二種いけ、そしてこの作例のようにスマイラックス等観葉植物だけそえたりしている。或いは白い海芋のような形が大まかでシンプルなものとのとりあわせも美しい。グロリオサは蔓性の草花で葉の先が巻いており他の植物にからみながら成長する。そのため盛花では茎はあまり長く使えない。高くいける必要のある場合は、支柱をつけるか、他にとりあわせた花材の枝に葉先を巻きつけるのも一方法である。スマイラックスも百合科の植物でアスパラガス属にいれられている。当流ではあまり使わない花材だが背の高い花瓶から垂れ下がらせていけられているのを他の流儀のいけ花展でよくみかける。ふさふさした鮮かな蔓状の緑の使い方の一例として床の上にスマイラックスをひろげてみた。日本で詩や書固にたずさわる場合本名の他に雅名として就が用いられるようになったのは比較的近世になってからのととであろう。多分文人趣味が盛んになった室町期以後のことではないかと思う。私の家も代々雅名として冨春軒という軒号と専慶、仙渓の他に同音の花号を用いている。軒号の軒は文人の書斎を意味し、庵、斎、居、洞、房等の字と同じように使われている。そしてこれらの本名とは別の称号は自分の文人的理想を象徴するような意味の文字を選んでつけられた。このような風習は中国から入ってきたものであるが命名に対する考え方は日本と中国では大きくくいちがっている。日本では親の名前を一字とって子供につけることが多く、天皇家も「仁」という字を代々用いておられる。と乙ろが中国では姓は大切に継ぐが名の方は父親の名前の一字をとって命名することはもってのほかの大不孝であり、音の通じる字も使わないそうである。それどころか父の名に用いられた文字を一般的な文章に使う乙ともきらったようで唐の詩人杜甫は父の名であった閑という字は詩作の中にも一切使わなかったという。儒教文化が日本で変容した面白い一例である。競(号)について,『− ログサオスマイラックス花器三角形白和i花器8

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