テキスト1986
43/144

わかばかきっぱた桜杜若花器天目制水盤こ乙暫くの問、屋根瓦の葺きかえや塀の改装で庭は足の踏み場もなかった。四、五日前やっと工事が終って足場が片付けられ、庭師の手入れがすむといつの間にか福寿草が咲き蕗の墓・と・フから白い花の膏が顔をのぞかせている。そろそろ桜の季節がめぐってきたようである。私達は桜の花に様々な想いをょせる。清らかさ、喜び、豊かさ、或いは妖艶な美しさを感じることもある。そしていけ花ではとりあわせによってそれを表現しようとする。満開のうっすらとした桜色に杜若の紫色をそえてみると、それは古くから日本人の愛してきた配色でありはなやかに咲く桜の静かな上品な一面をただよわせる。そのとりあわせに、もうひと色杜若の撒葉の緑がそえられると、広い水盤の鏡のような水の面に閑かな花みもしずの息遣いまで感じられるような気がする。まず桜からいけはじめるが、手にとった枝が立ち校なら立体型に、横枝なら斜体型にと花の自然な姿をそのまま大切に生かすような枝どりを考えたい。次に花の量が多すぎると息苦しくなるし、少ないと寒々するので、水盤の大きさにあわせて適量を見定める乙とがこの花をいける上での要点であろう。3

元のページ  ../index.html#43

このブックを見る