テキスト1986
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花器京都の近郊の山の中でも時々見かける蔓草である。木通は蔓物花材として、昔はよく使われていたが、野生しているものを採集してこなければならないので、現在では特殊な花材といった方がいいだろ、フ。そのかわり、同じ木通科の跡子が実をつける頃、花屋にも花材として入荷する。村動と都千ぱ、葉も実もよく似た蔓物だが、木通の蔓は郁子より軟弱なので、実が大きくなると垂直にぶら下がってしまうので、蔓物の流れるような線が出しにくい。作例では、そのような点を考慮して、実の一つだけしかついていない蔓を右斜前にのび出させ、実の多い蔓を背の高い花瓶の前に垂らし、蔓先の実を床面につけて、蔓の線が出るように工夫している。こうしておけば、床面の木通の実を移動することによって、高い花瓶の口から垂れ下がる蔓の線を自由に動かすことができる。とりあわせに、花茎の長い秋明菊を使っているが、出生の姿を失わない程度に切り縮め、下葉をそえて水際をととのえる。花材村静秋明菊(貴船菊)黒色陶花瓶ぬ木通あけび, 5

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