テキスト1986
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室町時代に、狩野宗祐の描いた立花図には、黍が真として立てられていづ令。その立花の真直ぐに一本だけ立てられた黍には、大きくゆるやかなうねりを見せる葉、その下に、黄菊、白菊、紅菊が配きれ、大葉、前置、流枝と続いている。強いて立花の型にあわせたような感じのしない素直きが私は好きである。立花と、盛花では、その特味に違いはあっても、上の作例はあっさりしたかぎりけのない一瓶である。撮影のとき、黄色のパック紙の上でライトをあてると、黍の焦茶色、菊の黄色に広いつややかなポトスの緑がくっきりと浮かび上がって、ありふれた稽古花材からも、しみじみと味わえる豊かな美しきをひき出すことの大切さをあらためて感じる。黍は日本使っている。多量に用いる場合、重なりあう葉の乱雑きをきけるため、葉をとり、穂の量感を強調する。作例には貰菊とポトスをとりあわせているが、このような黍の立て方をしておくと、明るい洋花類なら他に何でもとりあわせられるだろう。花材ポトス花器線刻文コンポート黍きび黍黄菊5

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