テキスト1985
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同司−りつかいまようすがたたて今年もそろそろ蓮をいける季節になってきた。蓮池通いがはじまってもう何年になるだろうか。皆ではじめて行った時の写真も沢山残っている。私が関西いけばな研究グループの同人達を案内して何度も蓮を切りに行った。昭和五十五年の亙入院中の父に代つである花道雑誌に掲載するため蓮の立花をいけた乙ともある。その年の秋父はなくなった。毎年泥ん乙になって蓮を切りに行っているが流祖の著した江戸中期の「立花時勢粧」K「蓮の一色立んとおもわば自池辺へ行て:::」と書かれているので未だにその申し付けを従順に守っているのである。「立花時勢粧」には蓮一色の立花が三作おさめられている。上の挿画は流担菅川春軒の作で葦と小菊をまじえて立てている。葦の茎の曲線が蓮池の上を吹きわたる風を想わせる流麗な一作である。他の二作のうち桑原次郎兵衛は他の水草をあしらわない蓮だけの立花で、それは真の扱いである。もう一作寸松軒という人の二株立ての砂の物には蒲がそえられている。上の帰図は初版本と同じ版木を伎ヴた無彩色のものだが、初版木の彩色さたれものを見ると正真の上下の二花のみ白花を使い、副、は淡紅色の花が使われている。今年も乙の手本に習って夏の一日を蓮一色の立花に費してみたい。みずからゆきそえうけ請、胴に4・富永狩6

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