テキスト1985
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くじゃ〈やしはなしようぷ黒海芋花器染付深鉢父が若い頃買った花器が沢山残っている。昭和初期の流誌や写真に作例に使った花器も出てくる。重代の由緒ある品物といったものではないが私達には大切なものである。花訴と一緒に幼い素子が写真にうつっていると子供達は興味深そうに母親の顔と花器を見くらべている。作例に使った花器もその一つである。昭和十二年三月に当時竣工した祇闘の弥栄会館で開催された父の家元襲名記念花展の写真集では正面の大ステージの中央にとの花器がおかれ孔雀榔子等三種の観葉植物と洋花らしいものがいけられている。他にも二、三枚乙の花器にいけた写真が残っているが大体当時最新と思える花材が使われている。父はモダンという言葉をよく口にしたがそんな感じをねらっていけたのだろう。そのいけ花のことは念頭になかったが上の作例のとりあわせ、花型を考えてみると、当時黒海芋があったなら多分父も乙んな花をいけたのではなかろうかという感じがする。黒海芋三本のうち二木は葉付きのまま、開花したのは葉をはずし、花の下に配置して花の色を目立たせるように挿す。花菖蒲四本の葉は控えめにして主材の黒海芋の形を乙わさないようにしている。表紙の黒海芋を使った小口問とくらべて渋さと落ちつきのあるいけ花である。花菖蒲8

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