テキスト1985
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しかるうけ花器ヴ令花の名前は人間が勝手につけたものである。花がそう名乗った訳ではない。なのにその名前に縁起をかつぎ喜んだり嫌ったりしている。南天を難転と読みかえ禍いを転じてくれる有難い植物であるという意味Kと。いけ花の方でも十五世紀にできたといわれる「仙伝抄」に「つねには立ず、悪しき夢を見たる時立る也」とある。なんともほおえましい伝書である。流机一円田春軒の「立花時勢粧」に「南天の胴」という花型がある。実のついた南天を胴、請、控に使った独特のもので「南天の胴作りと云事は古人も指も=りしたる花形なり。然に出生を考え法度をよけ花形あしらい等を工夫して、あらたに指そむる物なり」と持かれている。生花で南天を三本使う場介真、副、胴と配向し作例のような胴で難しくはないが、立花で南天を胴に使って形をまとめるには相当熟練した技巧がいりそうである。南天は切花用として栽培された計木は幹が真直で細く生花としていけても大して見ばえのしないものだが田舎の農家宅出先に見事な枝ぷりの古木がむらがっているのを見かけることがある。ごたえもあり、いけ上がった盗にもひきしまった古風な上品さが感じられる。晩秋赤い尖がなり、業が紅葉しはじめた頃その美しさが最高になるが、いけると落葉しやすい。とくに識を吹いたりすると一度にバラバラと散ってしまうので注意を要する。生花にいける場合には留、控等にまで南天を使って一極いけにする乙とはなく、必ず根締めに他の花をそえる。色は赤い実、紅葉に対して白花、或いはごく淡いピンクの花を私は好んでそえている。撰めにくい花材なのでなるべくあわせやすい枝ぶりをえらび充分ためしてからいけはじめる。流儀によっては結び南天という挿法もあるが、当流ではそのような奇は好まない。い!っ己とさしζういう南天ならいけ南天白菊白磁花瓶たてたつ9

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