テキスト1985
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8月M日からお日まで大阪心斎橋のそごう百貨店で開かれた同展の前期に桑原和則、後期展に辻田慶敬の男性二人に参加してもらった。左の写真はその出品作である。上が桑原和則の立花で洋花を主材にしている。立花としては失敗の多い花材なのだが真夏の会場にみずみずしくフレッシュな明るさを持ちこもうという目論見は成功したようである。こういう立花でまず注意したいの新進いけばな作家競作展は色彩が過剰にならないこと。脱色した枯花材は使いやすく他の明るい色彩の洋花とあいそうにみえるが潤いに欠け、そこだけが浮き上がって見える。花器は古色蒼然としたものは勿論あわないが、かといってあまりにも創作的な感じを与えるものもよくない。現代作家の明るく上品な花器を選びたい。心の中でくり返し描き、それがはっきりできてからいけにかかるべきである。いい加減な計算でいけはじめると途中で手が止まり折角用意したその上でいけ上がりのイメージを花材が新鮮さを失っていけ終るまでに失敗が決定付けられてしまう。更に大切なのは会期中の朝夕の手入れである。色鮮かな花の色は会場の苛酷な条件の中では槌せやすいし緑の葉の潤いも長時間もたない。和則も今回はじめて多勢のいけこみの人々の聞にまじって自分一人でいけ上げる機会を得たが、前述した心得をよく守ってくれたことを喜んでいる。後期展の辻田さんの生花は二瓶飾りで主瓶が葉付きの基一船艇、白龍膳。副瓶が葉付きのデンドロビュlム・ファレノプシスとアロカシア。葉付きの蔓梅擬は珍しく、いけこみ中随分多くの人に花材名を聞かれたそうだが、花材として花屋から届いた時には枝が密生した上に暴れすぎていて、どう切りすかしてまとめたものか思案のつきかねる枝ぷりだった。用意しておいた花器も変更し大まかないけ上がりの姿を相談しただけでいけこみに行ってもらった。翌朝会場にかけつけてみたところみずみずしさの、ひときわ目立つ生花として申し分なかったと感じている。写真にすると枝葉が多過ぎるように見えるが実際には相当前後の奥行があり、その聞を涼風が吹きぬけるような感じがする。この生花も朝夕の手入れを充分にやったお蔭で最後まで一葉も散らず会場に心地よい爽やかさを与え続けていたようである。暑さの中を頑張って下さった両氏に感謝申し上げたい。

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