テキスト1985
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じ命ずだまゐ付びかごほおず含桑原専附底流いけばなテキスト加号昭和印年9月l日発行(毎月l回l日発行)珠数玉という名称は珠数の玉によく似ているからそうよばれているのだと思っていたが、東南アジアでは実際に珠数玉の実を使って珠数として用いているそうである。熱帯アジアが原産でいつ頃から日本に渡来したのかわかっていないが大ていの都市の町はずれで雑草地の水辺や湿地で必ず見かける植物である。雑草扱いなので花屋で売られてはいないが散歩のついでに集めて帰ることができる。野趣に富んだ花材なのだが、とりあわせる花にはなるべく明るい色をえらびたい。その点季節の雑草に近いコスモスは珠数玉によくあう花だ花器もそれにあわせてごく素朴な民芸品の木ゐ”通u龍を二つ使い、次第に日射しのやわらかになりはじめた近郊の夕刻を想わせるようなふんいきを出してみた。珠数玉は九月になるとだんだん実が黒くなり葉も黄ばみはじめ、初冬にはその枯色と真黒な実の対照が美しくなる。栽培植物におされて使われることが少なくなった花材だが、折にふれてとりあげたい秋色豊かないけ花である。花器花材珠数玉じゅずだ’とい、えス出。珠数玉とコスモスコスモス木通龍二種桑原尊慶流家元発行妹が小さい頃鬼灯の実を鳴らすのに小さな穴をあけ、中の種をとり出すのをよく頼まれたが中々うまくいかないものですぐに実がさけてしまう。その時の恨めしそうな目付きを線香花火、蚊取線香、縁側の涼しさと共に想いおこす。花にはその花自体の美しさに魅せられると共に、その花と共に過ごした想い出の蓄積が心に歓びとして色鮮かに残り、或いは微かな哀しみとして染みついて行く。一つの花を手にする時、想いは様々である。歳時記で鬼灯は初秩の頃にいれられており、いけ花の古書ではとくに子供や女性の客へのもてなしに向く花材とされている。とりあわせとして一般的なのはやはり軽やかな初秋の草花ということになるのだろうが、その場合っきすぎた実や葉は整理し、ごく自然に育ったような感じの枝に見せることが大切である。だが鬼灯の実の色をひき立てようとするならこの作例のように純白の水々しい鉄砲百合といけあわせるのもいいだろう。いずれをえらぶにしても実と葉のつき具ムロで枝ののびやかさを作らなければならない多少厄介な花材である。花材鬼灯(酸柴)鉄砲百合花器焼締め花瓶定価五33円〈表紙の花〉ま

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