テキスト1984
89/137

とううちえぞ唐糸草は、白山や白馬岳で夏に咲く日本特産の高山植物である。糸のような一センチほどのピンクの花が穂のようになって、細い芸の頂部からたれ下がって咲く。たよりないような花だが、下界より一足早い高原の秋を感じさせるので、薄や桔梗等といけて静かな美しさを味わう。花は穂の先の方から咲き始めるが半開の聞の菅は美しいとはいえない。切花として手に入るものは、栄養が良いせいか、分校が多く、そのままでは雑然として、開いた花の邪魔にもなり、又一品原で、わびしそうに咲いている風情も感じられないので菅のついた枝は一、二本残して、あとは整理してしまった方がよい。花の咲く茎とは別花、根から直接葉だけの茎があるので、それを挿しそえ、水際を整えたり、花型に変化をつける。作例では左下、右斜前、奥行にその根出葉を使っているυ朱色の姫百合を右斜前に一輪だけ挿して、全一体の色調をひきしめるように考えた。唐糸草の仲間には唐打草があり、白花の高嶺唐打草、唐糸草そっくりの蝦夷唐打草の他、本州中部から北海道、カムチャッカにかけて多くの種類がある。花材唐糸草姫百合花器備前焼花瓶き、今度は⑮さんに同じアンスリュ1ム二本と鳴子百合をアンスリュlムの葉三枚にかえていけてもらって⑨図となった。両者をくらべてみると、@さんの方は大分考えながらいけておられたが、鳴子百合の緑の量に対してアンスリュlムが強すぎて、左側の一本が宙に浮いたようである。⑮さんの方はすらすらといけ上がり、形もよくととのっているが、花器にくらべて、葉と花の面積が大きすぎるようである。花器を大きいのに変えるか、一枚少なくした方がよい。⑮ @ 9

元のページ  ../index.html#89

このブックを見る