テキスト1984
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薄使鶏頭花器辰砂粕舟形水盤人それぞれ好きな花というものがある。私の好きな花の一つとして薄が数えられる。何故好きなのかと尋ねられでも答えようはないが、強いて言えば、秋草の代表とでも感じているのであろうか。春先、淡あわい緑の若葉が枯色の古株の聞からのび出し、卸価、日明と成長して行く様子を見ている中に、いつしか私の背丈より大きくなり、やがて穂が出はじめる。初冬を迎える頃には、瑞みず々みずしかった穂も枯尾花となり、青々としていた葉は霜にあたって紅葉し、枯れて行く。薄の姿のいい時期は、七月から八月、いわゆる青あお茅がやとよばれている頃ではないだろうか。穂が山はじめる九月には伸びすぎて葉と葉の間隔がひろがり、手頃な長さに切ると一本の薄に葉が二枚か三枚しかつかない。それでは到底しなやかになびく葉の美しさはのぞめない。だからその時期には成長のおくれた穂のまだ出ていない薄をそえて葉の美しきを補うようにしている。主株に薄を二本使えば、真、副と前から見た形がきまり前後になびく葉で、胴、見越と奥行がとれる。うす紫の桔梗は真囲或いは奥行の不充分な場合は見越の下の方に一本。胴のあしらいに一木。留から控にかけて白花の桔梗を一輪まじえておくと色彩に強弱ができて、深まりができる。薄の葉は左右に互生しているので、になるようにいけてから形をととのえる。子株の鶏頭は、真、副、胴、留、控の五本。主株が草型の副流しになっているので、子株は同じ副流しはさけて、行型におとなしい形をとった。水盤で株分けにいける場合、形の基本として、一瓶の生花を副側と留側を二つに分けたものと考えられている。その上で主株にも小さな留をつけ、子株にも真、副を加えて一つの独立した形をもたせる。乙の作例では薄が、副流しにいけられている場合、一株いけなら閣は、重量感のある花材を、あまり右にはり山さないようにそえるが、その感じを株分け挿に移して主株の草型副流しに対して、子株は鶏頭の行型とした。茎を中心に葉が前後/ \ 中古7

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