テキスト1984
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夏櫨三(なつはぜ)VFiji 花器淡青粕花瓶暑い季節には草花はいたみやすいので、もちのよい枝物を時々まじえたいのだが、涼感をよべるものは少ない。常緑樹を技数少なく、端正な形にいけておくのも一つの方法だろうが、古風すぎるかもしれない。他に枝物というと上の作例のような、細手で、葉のよくしまった夏櫨がある。といけてみると、風通しのよい夏向きの生花ができる。技の細さがまともに見えてしまうので、しっかりした形に見せようとすると、枝を切りつめて小品生花になってしまうが思いきって真や副を長くとってみたい。細い枝物は他に、深山南天、雪柳等がある。夏櫨なら葉が緑色一色ではなく、赤いのがまじっているので、一種挿にできるが、深山南天や雪柳には、草花二種を加えて三種いけにする。私の稽古場では、からませ、留、控に二輪咲きのピンクの小菊を使ってみたが、きわやかな色彩で少し粋な生花ができる。テキストの八月号の生花を読みかえしてみると、五十六年が杜若と桧扇、五十七年が桧扇に桔梗の株分けと、縞段竹と黄花海芋の一株いけ。五十八年が擬宝珠と、睡蓮、杜若の株分けとなっていて、枝物は全然使われていない。年の聞に杜若と、桧一扇が二度ずつ使われているが、真夏の花材として桧扇は毎日水をとりかえ清潔にしておくと丈夫で長もちのする花である。真、副、留の三体のあっさりした花型なら、生花を習いはじめたばかりの人でも楽にいけられるし、少し変った枝ぷりの桧扇を、好みの形にまとめてみたり、清楚な感じにいけるという技巧もたのしめる。乙の頁の夏櫨は中級向きの花型で、枝どりのよい稽古になる。更にこのような細い枝物花、草花をつけ加えると、技巧上にも難しさがましてくるが、うまくいけ上がった時の喜びは大きい。これを余分な枝をとって、のびのび真、副、胴に小輪の鉄線を6

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