テキスト1984
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鉄線紫C花器鉄線絵付横長水盤遅咲きの山桜も散り、若葉が明るい緑の木蔭をつくるようになってくると、山間の渓流も足をつけてみたくなるような親しみを感じる。五月の爽やかな悦郎、快い冷たさの流れ。鉄線をいけて、その聞に縞太閣を立ててみると、そんな感じがする。縞太蘭は日本程束ねて下を括る。三束乙しらえて左後、真中の前の方、右の中程と挿しておく。次に鉄線を、前は低く長くのばし、中程は高く立てる。後を少し低めると奥行ができる。残りの縞太蘭を三t四本ずつ束ねて鉄線の聞に挿すと更に奥行が深くなるο花器は染付(呉須絵の磁器。呉須を用いて生地に藍色の絵を描き、その上に無色のう粕わぐ薬すりをかけて焼き上げたもの。)で鉄線が描かれている。横長の花器なのだが前後の奥行もあり、深さもあって、ゆったりしているので、生花の株分けにもいいし、洋花ともよくあうので使う機会が多い。鉄線を鉄,線の絵柄の花器にいけていると、つい両方を見くらべてしまうο花器に絵がついているといけにくいものだが、染付の単純な絵柄は、さほど気Kはならない。嫌なのは、全面に極彩色のほどとされた壷形で、よく新築祝等で贈られる胴のふくらんだ花瓶である。形としていけにくい上に絵柄が大抵の場合花の美しさを殺してしまう。四月から五月へ、又六月へと私達のいける花は次々と移り変って行く。それを追いかけながらテキストを作っているのだが、何作かの中には、その号の月の花としては月おくれの感じになるものも山てくる。早咲きの花を使えばよいのだが、貧弱な咲き方でしかない場合が多い。とくに木の花の場合季節を待って写真をとる。できれば前年のテキストも参考にしてほしいνすえ縞太蘭モムMつゆ3

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