テキスト1984
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つぱめのするυまちなか昨年の暮に書斎ができてから机の前で過ごす時間が多くなった。色々な書き物に費す時間と、本を読んでいる時間をあわせれば一日の三分の一は書斎に居るようである。京都新聞に「花ど乙ろ・味ど乙ろ」を連載するようになってから食べ物に関する本を読み返しているが、古来食物に関する名著とされている中国の清時代の意えん枚ぽいの『随閤食単』と十八世紀のフランス人、ァランの『美味礼讃』は何度読み返しても面白い。二人共政府の高官であり豊かな生涯を送っている。そしてあらゆる学問芸術に通じ、その上での食物論なのだから、ただの食通の料理評とは比較にならない。意枚は「論誼巴をはじめ中国の古典を引用して自説を展開し、「飲食道は小さな事のようだが、私は孔子が道を求めたのと同じ気持で人々のために美味を求めているのだ」と自信をもって言いきっている。乙の二冊の本には実際の料理法も数多く解説した料理書でもあるが、その行聞に、食事を通じて彼等の人生観がのぞいていて、私達にζういう生き方、考え方もあるのだという乙とを教えてくれる。『随園食単』中でとくに興味深く何度も読み返しているのはその自序花どころ味ごころの部分と、須知単という料理花関する予備知識を説いた一章と、戒単という注意事項を列記したととろである。構えが書かれているのだが、そのままいけ花にもあてはめて心得としたい項目がいくつもある。といって材料の天性をよく知らねばならないと書かれている。意枚の説をいけ花に援用すれば、一瓶のすばブリアサヴらしいいけ花は、いけ手の功績が六分で、花材のよさが残りの四分となる。のとりあわせを知らねばならない。の使い方をよく考える乙とο私達も花器の選択を誤まってはならない。は料理を出す順序のととであるが、いけ花展での色々ないけ花の配列の注意にあてはまる。についての心得事。て名前に乙だわらないで材料を選べと注意している。高価なもの必ずしも良いとは限らず、料理すれば、下手に料理した燕商に勝るというζとである。はひかえろというζとだが、せまいそ乙には料理に対する基本的な心須知単の第一項には、「先天須知」第五項には「配搭須知」||材料第十一項「器具須知」||食器第十二項「上菜須知」||乙れ第十三項「時節須知」||季節戒単の第三項に「戒耳餐」といっ豆尉でもうまく第四和「戒目食」1ll料理の数会場にすき間なく並べられたいけ花展が乙れに当る。第五項「戒穿撃」||小細工をしてはならない。第六項「戒停頓」||材料の持味を殺さないようにするには、聞をおかず手早くいけられるよう修練すべきである。第七項「戒暴珍」やりのない乙と、珍は物を粗末K扱うととο意枚はこんな事も壬一門ってい「かんかんにお乙った炭火の上で生きている鷲鳥を歩かせて水かきをあぶったり、鋭利な刃物で鶏の比き肝をえぐり出したりするというのは君子のなすべき乙とではない」私造りは食べようと思った乙とが一度もない。第十四項「政萄川」||間にあわせや手抜を厳禁している。燕寓(海燕の巣)の料理にはとういうととが書かれている。「燕高は一両側なものだから手軽には使わないが、もしこれを用いるならば一鉢に必ず三両(一一三g)ずつ入れるようにする。たった三銭(一一g)を用いて他のもので増量したのでは、燕簡を味わった乙とにはならない。乙れが燕寓の料理だと人にすすめるなら乞食が金持のふみ怪してって貧しさをはっきりさせるようなものである。」いけ花でもある程度の量がまとまってとそ、その美しさもMの上でまだ動いている魚の活けるυ何川味が違うのは不安定さを一不がなるほどと味わえる花がある。いける事はたまにしかないだろうが、そんな時には思いきっていけてみたいものである。仕事に直接必要でもない乙んな木を面白がって読みあさっているので此頃少し運動不足しているようである。ジョッギングでもすればいいの||暴は思いだろうがあの恰好で町中をウロウロ走るのは御免蒙りたい。dコルフやテニスは毎日という訳には行かないし気に入った相手も必要であるυ他に良いことも以いっかないのでど乙へ行くのにも自転車を使う乙とにしてみたν向転車で走りまわってみると京都の街も案外小さく感じるが、それでも通った乙とのなかった小路や裏通りが多かった乙とに気付く。京都新聞の料理記事も十月の八日で二十回自になるο発行部数も多いので、沢山の方が読んで下さっているのだろうが、私のような主人の料理記事を玄人が読んだらどう忠うのだろうかと考えると恥かしくてたまらない。玄人と素人の決定的な差は味の安定度ではないだろうかυ私が作るとよほど作りなれた料理以外は毎回味が追ってしまう。玄人は一つの料理を完全に利熟しているのでそこから追った味もひき出せるのであ、かえすもので、そとからは新しい味は生まれてとない。いけ花と一絡にそんな事を感じているυ

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