テキスト1983
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はやそよかぜ花菖蒲黒コンポ花器四月も半ばを迎えると、日中少し蒸し暑さを感じるような日が多くなってくる。うっすら汗ばんだ肌に心地よいその頃の風をとそ微風とよびたい。立の微風は物一段く気に怠るい。秋の風は迅い。雪柳や小手惑の花には微風がふさわしい。いけられた小手控に社若や紫の花宮崎が姉しそえられると部屋の中に微風がわたってきたような感じがしてくる。ひんやりした花の色がそれを感じさせるのか、池の面を連恕するからか、おそらくその両方が気持にしみ乙むのであろう。ありきたりのとりあわせではあっても、乙の季節であるu形は気取らず自然な方がいい。そして花訴の大きさに見合った枝数を考えないと黒苦しくなったり、透き間風が吹き乙むようないけ花になってしまうu普通に精肯したり、床の間ピ飾ってみるなら乙れ位が適量であろうν花菖蒲は尚く、小手鴎はのびのびと伏いたい。そうすると背も高い上に横にも枝が張るので形が問のびしやすいが、小手川出手前後にのばしてやるようにいければうまくおさまる。四月も終って、もっと気温の上がってくる五月になると、新緑と花菖蒲か杜若がいい。仙の花は一切まじえず、汀々した楓やむ七ιか簡まどといけると四月の微風よりもっと涼しい風が感じられるいけ花になる。ιは一度はいけてみたい花うげを扱う場所にしている。堀矩健もあって、事務室というにはのんびりしすぎた部屋である。家に照る聞は大抵白分の書斎で物を書いたり、木を読んでいるので素子に退屈しないか、とか何か息抜きに趣味でも持ったらと言われる。友達の中には音響や映像に凝って、そのための良い部屋を作っている人もいる。私はいけ花の役に立つことと思って書斎にとじ乙もっているが、実は読書が好きで、それが趣味なのかもしれない。息抜きに散歩に出るにしても、行先はつい本屋になってしまう。近くに大きな店が沢山できたので、新聞の書評欄に山ている木でも大抵すぐに手に入るυ便利なのは有難いが木がたまりすぎるので仕事に必要なの以外は放におくようにしている。奥まった家の奥の唯一出荷は静かなものであるリ月に三晩はテキスト書きのため徹夜をするが、たまに聞こえるのは遠くの方のバトロールカ!のサイレンの音ぐらいのものであるoqが白みはじめると烏の時声が聞こえたりする。もう少し明るくなると色んな烏がやってくる。そして土蔵の白壁に明円があたる。ガラス戸をあけ放すと四月の早朝の空気が夜の明内の澱んだ暖かみといれかわって頭がさっぱりする。そんな空気の中で書き上げた原稿を整理している時どうやら私は幸せなようである。5 毛主5手で

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