テキスト1982
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京、大阪の夏祭の花といえば松一回である。七・八月頃には日もちの良い花は少ないが、桧一周は水揚げもよく、暑い盛りに次々と菅が聞くのを楽しめる。乙乙にいけた桧扇は達磨(だるま)桧一副で花は黄色である。仙に鳳且或いは孔雀といった大型のものもあるが生花には小型の方がよい。いけ方として注意する点は、あまり大きくしないととである。葉並びがよく、反りの大きいのを二本真と副にえらび出せば、あとは楽にいけられる。真の高さはせいぜい印佃どまりが見頃の大きさのようである。一種いけや株分けで上図のように他の花をとりあわせることもあるが、一株に五枚か三枚が重苦しくなくてよい。次に切花として売られている桧一助の花は、花をつけ過ぎたせいか、花の茎が奈曲して形がよくない。京間にのびた芸を残して姿をととのえる。真、副をとり、胴、留、控と短くなるにつれて葉が余ってくるが、その中から留や控にそえる葉ができる。留には前記の残り葉二枚を花茎の前にそえて水際の形をととのえる。木勝手の場合なら左を短く、十引の長い業の前に組みあわせる。控も短いのでほとんど花芸だけになってしまうが、控には細手の葉をそえる。子株の結梗は真、副、胴、問、控の五体としているが、桧一周を子株にもいける場合なら、真、一刷、留の三体で、いずれも副流しがよい。広い水盤に株元の締まった生花をいけるなら、何よりも澄みきった水を満々とたたえてほしい。水を花器の円一杯にまでたたえるには花器は水平に据えられていなければならない。水平に据えられた花器一杯に張られた水面Kあってとそ生花というものはきりっとした姿に見えるのである。薄端(うすばた)に山山来た大きな水面は銑のようであり、水が見事に静止している械には厳粛ささえ感じる。6

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