テキスト1982
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(おもだか)花器染付深鉢郊外の埋立地にとり残されたように立っている蒲を見るのは位しいものである。厚くしっかりした長い葉や、焦茶色の穂が一面に生えていた元の水際の風景を想像して、えるのは私だけではなかろう。留にそえたのは丸葉沢潟(まるばおもだか)で沼地に生える一年草である。今見ている植物図鑑の丸葉沢潟の写真の背景には蒲が写っていて、いとりあわせだったなと思っている。沢潟は八月半ば頃小さな白い花が咲くが、京都周辺の池や水田の周囲でもよく見かけるが、よく似たものに沢潟の変種の慈姑(くわい)がある。京都の正月の御節料理Kは欠かせないものなので近郊の水聞に植えられていて沢潟とよく間違えたりする。蒲は四本を真、見越、副、胴に挿し、沢橋は、絵図、留、控に三葉と、留、控Kは花茎もそえている。蒲はどくのんびりと葉の交差をなおす程度のいけ方で充分である。そしてしなやかそうで、しかも弾力性の感じられる蒲の葉は短く切ると、折れたパ、不のように固さが目立ってくるので生花はなるべく長く扱いたい。蒲の生花にそえる根じめの花としては水草が良いのだが、その季節には適当なものが少ない。一般的なとりあわせとして黄花海芋、擬宝珠等が考えられる。他の陸草と共にいけるなら株分けにするのが生花としての本来の姿であろう。蒲は葉先がいたみやすいので穂が色づきはじめた頃になると、先を切りとって売られているものが多い。蒲としての美しさは半減するので生花としては勿論のとと、盛花としてもそんな蒲は使いたくないものである。又他に小蒲や姫蒲という小型の蒲もあるが強い生命力を感じさせるのは普通の蒲であろう。人間の行為に不安をおぼ蒲い沢潟7

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