テキスト1982
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との花器は随分以前にまとめて買ったものの二つだが倉の整理中に出てきたので使ってみた。アリアムは、花材としてもごく普通のものである。花屋で売られているものは大抵栽培中に様々な形に曲げられているが、あまり好きではないので、真直なものばかりえらんでいけて言ってみれば葱坊主でありみた。花器にガラスの砂をいれ、剣山を置き、花を挿してから又剣山の上にガラスの砂をまいている。この鉄線はピンクの小輸で高さもあまりない。かわいい花である。若い女の人の好む花ではあろうが男でも好きな人が多い。男のいけ花は骨太な構成的なものを好んでいけるように思われているが、本心はこんなかわいい花をいけてみたいのかも知れない。中年の堂々たる体格の男が楽しそうな顔で、とんな花を手にしている所を想像していただきたい。ま乙とに、ほほえましい姿ではなかろうか。ピンク小輪鉄線花器・ガラス鉢アリアム景曲体拾二月初旬掃花花器、清淡褐色水盤景曲体、池中体、一色体の三体を写実本位の盛花としているが、古い伝書の一節を御紹介しよう。一面の水盤の内に深山渓谷の情景をあらはし、里園水汀の風趣を象りて、極めて写実的な花体を創るを景曲体と云ひ池中体と共に出性尊重の盛花として特色がある。自然を描写するのであるから構想は様々に変化があり、非常に範囲の広い応用を得るのである。高峯にか、ふる雄俊なる老松の情趣を現し或は雑草に交る姫百合の可憐なる風姿をうっす等、皆乙れ景曲体の技巧中に包含さるh所である。杜若咲く陽春の候より荷葉(蓮の葉のこと)立ち枯るる初秋に至るまで、池渓水辺Kある水草の情趣を写して盛花となすを池中体と云ふ。景曲体と共に写実をねらひ所とする盛花であって、満酒淡麗を本位とすべきものである。(三図)黄楊山菊羊歯目陰蔓薮柑子景曲体池中体5

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