テキスト1982
62/152

椿の名称を調べるのは難しい。同じように見えても芯が少し違っていたり、葉の形が異なるだけでも種類が違っている。乙の椿は多分『無類絞』(むるいしぼり)という名のものらしい。淡紅地花紅の小さい縦の絞模様があり、重ねの多い八重咲である。芯は割芯で類似したものに、江戸錦、中部無類絞、関西無類絞等がある。格という花は赤と白、それに桃色しかない(5ページ@)が、色々な校臓が入っていたり、花弁の重なり具合や形が微妙に変化し、花蕊の形も様々である。変った構が手に入った時の嬉しさは格別なものだが、倦まないのは一重の厳格や白玉格である。原柄、或いはそれに近いぷ朴な姿に魅せられるのであろう。椿の一一位挿というのは難しい。だが乙乙では無類絞そのものの美しさを尚喫しようと派手にいけてみた。花器はくすんだ黄緑色なので花の色が充分ひき出せる。いけて飾っている問に次から次へと咲き床の間がいつもより明るく感じられる。花の邪魔になるような業や市一なりすぎた葉はとるが、すかし過ぎると椿の些かさが失われるので注意したい。しゃくなげ石楠花(しゃくなげ)の野生相のものは花は美しいが葉が良くないので稽古には敬遠されているようだ。いけ花展等で使われているものは大抵洋樟の鉢植のものなので葉も野生種よりも美しいが高価なため耕古に用いられることはない。石楠花(5ページ⑤)椿羊商色ではない。だから葉一識を見せないようにい葉の表面は濃い縦だが一公は茶色で好ましいけるζとである。この花はまず石楠花からいけ始めるが、上の方に美しく咲いた花を位置付け、下の方は残りの校の中から葉の良いものをえらんで水際をととのえる。三本の海芋は直立させる。ピンクの石楠花と白い海芋だけでは色が淋しいので黄色いラッパ水仙をそえると華やかさが山てくる。石楠花の葉は使いにくいが、とってしまうと不自然なのでどれだけ残すかが稽古である。乙の花器の模様をよく見ると鉄線のようである。古い伊万盟焼で好きな花器の一つで、いけ花展にもテキストにも度々使っているのでおなじみのものだと思う。他に染付では鉄料の紋様の水盤もある。中間原産の花ではあるが、中国には鉄線を題材にした絵は殆どないそうだが、日木Kは渡来したと言われる桃山時代以降多くの蒔絵や絵画に拙かれている。ヨーロッパにおいても杭培の歴史は古いが十九世紀になるまでは問題にされていなかったようである。私も毎年飽きずに鉄線をいけ続けているが、いつまでたっても楽しみの尽きない花の一つである。ζれは山味が感じられるよう、風通しのよい形にまとめて見たいけ花である。染付の花器もこの花によく合っているように思う。和弘鉄|簡太花器染付j宋鉢4

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る