テキスト1982
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エリカはヨーロッパに広く野生しているが東アジアにはなかった花である。文学作品や童話にもよく出てくるので私達日本人は何となくロマンチックな感じをもっている。英語はヒlスと育っている。ブロンテの「嵐ケ丘」に出てくるようなスコットランドの荒野原で淋しそうに咲いているヒlスもエリカの極属らしい。いけ花に一般に使われているのはエリカ・メランテラで南アフリカの原産。大正末期に渡来し蛇の目エリカともよばれている。ピンクの花が一民のようにびっしりとついているが枝先は花がはげ落ちたようになって境っぽい色の緑の小さい細い集がついている。乙の部分は不自然にならない程度に切りとってやらないとピンクの小花の色がひき立たない。肢の形も変化がなく大ていの場合色のかたまりとしていける。とりあわせる花はこの例のように白、ピンクのカーネーションや、ラッパ水仙、パラ、海芋(かゆう)トピー等うるおいの多いものが良いようである。あまり考えすぎてむつかしいものをとりあわせると、失敗することが多い。割合永もちのする花ではあるが、いけて二、一二日目から葉が落ちはじめるので花器の周聞を時々耐除してやるととが大切である。エミリl・、スイーお正月の賑わいが去りかけるのを見すましたように底冷えがやってくる。京の街の風物にあてはめれば、十日恵比須が終る頃底冷えが大きな顔をして座り乙む。近頃本さの中で妙に違和肢がするのは加茂川の百合鴎(ゆりかもめ)の群である。故郷のカムチャッカと比べれば暖いのだろうがどうも底冷えの加茂川より南国の治に向いたような白川ではないだろうか。もっと哀愁をおびた黒っぽい鳥の方が冬の加茂川にはふさわしい。宵合鴎も同じ来るなら夏にしてもらいたい。十日を過ぎると稽古がはじまる。私の家は純白木風の上に少し変った建て方なので栴古日は二階の稽古場と居間以外はあけっぱなしで部屋の中を窪風が吹きぬけて行く。乙の家に戻る迄は暖房のきくマンション暮らしだったので薄着ですましていられたがそうはいかなくなってしまったようである。厚着の右人を見て悲らし方の不合理さを不可解に思っていたが古い家の造りに愛粁を感じはじめると中々思い切った改造も出来ないものである。今夜で三晩夜中に原稿書きをしているがガスストーブの大きいのをつけっぱなしにしていても二時頃になると足が塞くなってくる。書く手をとめて、あそ乙にも戸をつけて、ここはこうしてと、っ「寒」カーネーションエカ花器濃褐色水盤8

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