テキスト1981
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笹前五毎年もう出て来る頃だと待ちのぞむ笹百合である。乙の笹百合は五月六日のものである。前の濃紅、五月梅の純白、その中間の笹百合と色は揃っている。他の系統の色は混ぜたくない。花器の色も目立たないものをえらんだ。笹百合の六月をいけた、といえそうな花である。床の間は勿論、書・斉や居聞にも笹百合のある問中いけておきたい。乙のテキストにとりあげた花以外にも是非六月にはいけてみたいものが数多くある。まず花菖蒲で銘品種が初旬K一斉に開花する。白、紫、赤紫、の花が単色、絞り、縁どり、染め分けと色とりどり咲く。花弁も三弁、六弁の他に色々な変種もある。葉もしっかりしていて生花にいけても気分のよいものである。六月には梅の実も美しい。熟しきる前の緑の鮮やかな頃、葉を適当に整理して実をはっきり見えるように合梅百と月いけるが大変品の良いものである。加茂川の出町橋付近や堀川のふちに誰が植えはじめたのか、沢山の立葵(タチアオイ)が咲く。晴れた自には特に美しく、もう咲いたかなと毎年心待ちにしている。ム口9頁の竹島百合も季節の百合としていけられる花であるが、満聞になると茎の頂部にきつい黄色がかたまって咲くのでとりあわせは新緑の美しい枝物とか、自の鉄線などあっさりした色調でいけあげるのがよい。がまずみの若々しい緑に花器は乳白色に近い淡茶色の花瓶である。竹島百合は高さ印佃にとり、がまずみは前後に深くいけている。左Kはり出した枝は葉をとって量感が出ないようにしている。竹島百合の乙とを車百合とも言うが正確には大車百合(オオクルマユリ)である。竹島百合に似た小型の花被片のそりのきつい、花色も少し濃いものを車百合という。東洋の百合は十九世紀にヨーロッパに渡って百合の歴史に新しいページを開いている。最初に渡ったのが鬼百合。ついですかし百合や鹿の子百合が渡り、一八六二年山百合がイギリスの王立園芸協会のフラワーショウに出品されると、その驚異的な美しさは世界の園芸界を仰天させている。私達が六月の下旬頃から手にするタメトモユリは山百合の中で伊豆諸島に産する茎のしっかりした系統のもので切花に適した品種である。明治初年には横浜から毎年十万個の山百合の球根が輸出され、大正時代には一社で千五百万個も出荷する程だったという。百月_L /'\ (ささゆり)(あざみ)(さっきばい)瓶花色褐濃8

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