テキスト1981
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白鉄線(黒竹篭)鉄線の花が中国から渡来したのは江戸時代の初期、流祖の桑原冨春軒が活躍した一六六0年代である。中国名は「鉄線蓮」という。円本の自生植のカザグルマとの迷いは、純粋種では鉄線の花弁状専片は6枚、カザグルマは8枚で紫色が多いそうである。洋種のクレマチスと交配されたものが多く純粋なテッセンやカザグルマを見つけ出すのはむつかしいらしい。大体は初夏の花とされてはいるものの、芸技術の進歩で一年中花屋の店におかれている。私達も一応はテッセン、と呼んでいるものの実際はクレマチスなのである。竹篭に麦といけてみると、やはり鉄線は五月頃の清涼感をうまく表現してくれる花である。庭に鉄,料を植えていたととがある。苔におおわれた庭が楓の新緑の頃になるとまるで緑の水底にいるような感じになる。そ乙に咲く紫と白の大輸の鉄線を想像していただきたい。緑の中に、ふわりと浮かんでいるように咲く花なのだという印象が私にはある。乙のいけばなには黒い竹篭を用いているので紫の鉄線では少し色が附すぎるようである。白竹の篭なら紫の鉄線が良い。鉄線は日もちの良い花だが麦の方は葉がすぐに黄色く枯れてしまう。だから最初から葉をとって穂だけでいけている。葉をつける場合でも二本に一枚を上の方で残すくらいで充分である。これから篭をよく使う季節になるが、風通しのいい、さらっとした花をいけたい。麦園風通しのよさ3

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