テキスト1981
45/156

山流しU(黒天目花瓶)桜は誰にも好まれる花だけに花材として使われる種類も多く、十月末頃の寒桜から五月頃まで色々な桜がいけられている。時によっては沖縄の寒緋桜まで見かける乙とがある。最もおそく咲くのは長野県の上高地あたりの純白のミヤマザクラが六月。北海道や東北地方のタ力、不ザクラの開花期は七月頃である。一般に桜らしく好まれるのは一重の桜で八重のサトザクラは古くから使われているものの、枝ぶりがそれほど美しいとはいえない。又サトザクラの房咲は山桜の淡白ではかなげな美しさとは異質な感じがする。だからサトザクラは、はなやかさを強張したい盛花や投入れに向いているといえる桜一色の立花では上の方では膏を、下の方に開いた花を使うと定められているが生花においてもなるべくそういうあっかいをして楽しんでいただきたい。実際に桜は下枝の方から咲きはじめると古来観察されているのである。乙の四・五ページの生花は共に副流しである。小手惑の方は垂体、山桜の方は普通の草の形である。留は短かいかたまりのように見せて副は細長く軽やかな形にとって左右の重さのバランスをとる。物理的にも視覚的にも副側と留側がつりあうようにいけてほしい。又副流しにいける場合胴も割合長く前にはり出させているので、見越しを充分作っておかないと前のめりな感じを,つけるので前後の力の働きようにも計算が行きとどかないと不安定な、見ていて落ちつかない生花になるととに注意したい。日本列島と桜1五5

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る