テキスト1981
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洛外白菊酸るυ日本というせまい島国でも、地町中の暮らしといっても、京都は町を出はずれたらすぐ田園風景があり、行く先々に清流が見られる。花をいけるにしても、いけ花の歴史の初期から親しみ深い洛外の風物がとりいれられている。乙の頁のいけ花にしても、全部他府県から送られてきたものには違いないが、感じとしては洛北の農家の庭先にあって不思議のない花である。いけてみて乙の女郎花の産地の信州を思いうかべず洛北の農家を感じるのが洛中の自然であろう。以上のような古風な自然調のいけ花も所により、季節により、それぞれの特徴が出来るのが当然の事であろう。私には親しみ深い洛北の風物を思い起こさせる乙のいけ花も、別な地方では別な感興がある筈であるリとの通りの花をいけてもその土地の自然にはなり得ないこともあ方により少しずつの違いはある。自然調ないけ花に、時にはその地方らしい’身近な特徴を織り乙んでみるのも大切な乙とである。乙のいけ花には女郎花、酸援に木通寵までは野趣を感じさせるとりあわせであるが、白菊だけは典雅なものを用いている。捨て育ちの菊ではただの田舎道の一部を切りとって来ただけの挨っぽい感じのするいけ花にしかならない。京都の町を出はずれた所はこの感じなのである。女郎花(おみなえし)花器木通寵(あけびかど)(ほうずき〉5 対等7}ι

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