テキスト1980
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編集発行青味が消え、レモンのような色になり始めた仏手柑は毎年黙っていても花屋さんが届けてくれる。子供の頃銀座の千疋屋の店先でよく見かけたものだがそれは不思議な果物に思えたものである。弟と二人でこわごわさわってみたり、どんな味のものだろうかと怨像し合ったりもした。花として仏手柑をいけるようになってからは、子供の頃感じた多少の気味悪きがかえっていけたい気持をおとさせているようである。仏手柑は柑橘類のシトロンの一変種で歴史的にも古い植物らしいがインド原産で中閏を経由して江戸時代前期に渡来している。果肉がなく皮だけしかない実なので食用にはならず、盆栽ゃいけばなとして観賞されるだけのものであるらしい。品良く文人調にいけることの多い果実ではあるが、色々と考えて違った感じにいけてみたい。仏手柑毎月1回発行桑原専慶流(花材)菊糸仏手柑ふきの葉京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1980年11・12月合併号No. 209・210いけばな

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