テキスト1980
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編集発行好みの花、数々あるが鉄線もその一つに入る。白、紫の他に洋種のクレマチスを交配させた淡青色に赤紫のもの、八重咲の鉄線。扱いに慣れれば水揚げも申し分ない。乙の写真をとって二週間近く美しく咲き続けている。好みの花がよくもってくれるのは大変嬉しいものだ。中秋から晩秋にかけての楽しみの花をあげてみると、まず椿、水仙を思いうかべる。朝早く水仙のいけである部屋の襖をあけるのも楽しいものである。夜のうちに水仙の香りが室内に満ちている。香りにつられて必ず花に目が向く。記応の底をほりかえしながら、そしていつの間にか心の中に出来上った理想の姿を想いお乙していけるのが椿であろう。なじみの深い花だけにいけて手厳しい批評が集中する。吾亦紅(われも乙う)は秋には一度は手にしたい花で、季節の日本の花は勿論のこと洋花にとりあわせても風情のあるいけばなになる。上の写真の花は黄土色の重みのある花瓶に、われも乙うを十本挿してから鉄線の白花をそえた。われも乙うの暗紫色には紫の鉄線では色が時すぎる。つるものの花は有難いことに二日位で花が上向きのよい形に変ってくれる。近頃は鉄線も手頃な値段で稽古にも使え、冬の一時をのぞいて年中手に入る花である。そんな花は是非とも使いこなせるよう稽古を重ねておくべきである。又好きな花というものは苦手な花より早く上達するもので、得意な花が出来るとそれからそれへと楽しみながら他の花も上手にいけて行けるようになるものである。好みの花. 毎月1回発行(花材)てっせんわれも乙う京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1980年10月発行No. 208 桑原専慶流いけばな

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