テキスト1979
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まつトルコキキョウモンステラ松は秋より冬、早春のころが葉色もよく引きしまりがあって、花材として適している。五月六月は松の芳芽が立ち姿もよくない。七月に近くなってようやく形をととのえるのだが、初夏から夏にかけては形も重たく感じられ活けることが少ない。また、新緑の若葉をつけて瓶花に活けるのも又、すがすがしく感じられるものである。「松、バラ」「松、シャクヤク」しかし、この季節の松にも若葉の楓を添え、バタ」「松、ツッジの類」「松、山百合」など中々調和のよいものである。「松、サンキライの実、夏はぜの紅葉」の木もの三種といった配合も清楚に感じられて好ましい。「松、青楓、「松、カキッヒメユリ」などすがすがしく色彩的にも美しい。この写真の瓶花は「松、モンステラ、トルコキキョウ」の三種である。トルコキキョウの紫と松の緑の葉色との色調もよく、それはモンステラの葉を取合せたところは、いかにも新鮮な感じをうけるのではないか。この松を活けた壷。淡いグレーの色に濃い褐色で絵付けがある。絵は柿の実だが、冬柿の図で季節的には渦和しておらないが、花器の色と花材の配合は中々よい。絵のある壺には、その図柄に調和する花材が好ましく、理想的には季節の絵図であることが望ましい。私達花を活けるものにとっては、普通には辰砂(シンシャ)程度の流れぐすりの花瓶が花も活けやすいのだが、九谷焼、染付の壷の様に絵のある花瓶も決して花との調和が悪いということはない。ただ条件として、絵つけのあるものは、その陶画が巧く描かれてあること、拙い画の花瓶は花も落若きがなく引き立たない。画の巧みな陶芸家の作品であることが望ましいし、画も満足に描けない陶器師が厚顔しくも絵つけをすることが間迩っているし、それを買う私達も絵のよしあしを選択して買うことが肝心である。図案のある壷⑧ 11

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