テキスト1979
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しまふといかきつばたシマフトイ、カキツバタ、ハスの葉の三種で生花を活ける。六月下旬に活けたもので、まだ蓮花の見えない季節である。生花の中で「水草三種」というのは珍しい。「蓮、河骨、睡蓮」「花菖蒲、河骨、睡蓮」などの配合もあるが、この写真のようにフトイ、カキツバタが一株になることは珍しい花形といえる。真、副にシマフトイ、花。これは形もよく調和もよい。紫の花を胴に入れ色彩感も美しい。留に蓮の葉三枚、巻葉を添えて形をとる。鉢栽培の蓮なので、大きさも手頃であり、手近かにあるので大小の葉を好みのままに選んで取り合せる。主株にはフトイ、にはまる葉の蓮葉、曲線の材料との形の配合もよい。大きい緑掲色の水盤に活ける。たっぷりとして花とのバランスもよい。紅色の蓮花が一輪あればいよいよ色彩感があって美しいだろう。生花にしても盛花にしても、水盤のいけばなは株もとの美しい仕上げがいちばん大切である。みずぎわと水面との接点、これが技術の重要な部分である。ことに、みずぎわを大切に考える生花では一層、注意せねばならぬところである。みずぎわの揃い美しく、清らかな水を入れた花器、ここに水盤生花の生命があるといえる。この写真で見るように、主株と子株の対照と水ぎわの美しさ、水盤内部のすがすがしさ、これがこの生花を美しく見せ、また品位を高く感じる作品となる。対ページのかきつばた株分け生花の場合も同じことがいえる。従って水盤花器は外部よりも内部の美しい陶器をよく選択することである。胴、控にカキツバタの葉とカキツバタの直線の材料、子株蓮7生花

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