テキスト1979
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.‘ ,4 六月に入ると山百合が咲きはじめる。淡い紅色の笹百合、笹葉によく似た築があるので笹百合というのだが、咲くので「早百合」さゆり、ともいう。鬼百合、ためとも百合、姥百合、黒百合、姫百合、おとめ百合など盛夏の季節まで山百合が咲くのだが、京都に近い東山あたりでも日当りのよい笛原に一木一本と立ち登って咲く笹百合は山百合の中でもいちばん美しく、清楚な情緒をもつ百合といえるだろう。山百合の中でも初めに―二本、篭の花器や細17の壺などに投入れざしに挿してあるのは四季の花の中でも、いちばん美しいいけばなといえる。残雪のある乗鞍あたりの高原に咲く黒百合の花、吉野山の渓流の樹林の中に咲く姥百合など、その環境を選んで咲く百合の花には、それぞれの個性があり、青白く臆たけた姥百合の花をみると、全く能の「山姥」の幽玄を想い起こすのである。かゆうに似た大葉が枯れがれとしてその対照の株から花軸が立ち登り、40センチの花菜の上に緑白色の大輪花を咲かせる。じめじめとした木蔭に咲く百合だが、よくぞ名づけたものと息う。腰までの低いかんぼくの緑の中に朱色に咲<鬼百合の花。木の葉をかきわけて近づいてみると、それでも2メーター程度に隆々と立ち登って花を咲かせている。緑の中に一点の朱色を添元て山を彩どるのである。ななかまどの実つきの枝に添えて、近くの谷川に株もCAJ―旦がら草、貝細工、などという名があるヘリクリサム、洋柾の草花だがその名にある様にL冬わら細丁で作ったような化。ある花である。ケシの花と同じように花百の下った姿勢の悪い花だが、なんとなく感じの迩で、写真の盛花は、亦い色のガラス器に立てて入れ、その前力ヘカキツバタの位杢を重ねて入れた。この配合によって変わった感党の盛花となつ⑧、fこ対。 ページの盛花は、初・及の単花五秤を配合して目然写実風の盛花を作っている。カユウの白花となでしこの紅花との他はすべて緑の菜をあつめて挿してある。なんとなく庭の一隅にある花園の一部をうつしたような盛花である。低く盛り込んだ菓ものと、ススキの葉、なでしこの細いぷの重なりなど技巧的な挿しカをしている。夏の盛花のる。とを水につけてのち、紙に在いて持ってかえる。「姥百合」とは伊鉗焼の耳付の壷に入れてみると、実に調和がよく美しい。山で見る鬼百合も風雅だが、床の間にしっくりと落若いた瓶花の鬼百合には一附、目然を深く感じるのである。山百合の季節は楽しい。四季の花の中でもいちばん美しいのは山に咲く百合であり、それは自然の情紹を背景にして咲く花だから、ということになる。―つの作法といえ昔からった花材8R

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