テキスト1979
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狸〗袴〗{ノみじかい草花とかんぼく類を考えてみる。山野に野生する植物の中から、園芸栽培の花の中から、大体を区別して私達のいけばな材料として使うものを考えてみよう。(野生の小潅木)ャプコウジ、岩梨、立日陀(野性の小さい草花)狸々ばかま、福寿草、春蘭、岩鏡黒百合、おだまきそう、たむらそう、さぎそう、くまがいそう、すずらん、つわぶき、きぶねぎく、紫蘭、すいれん、こはまぎく、すいせん、ざぜんそう、しらいとそう、なるこゆり、おもと. ー類、草花の類が多いが、これらを分類したのは私達が花材の中から短いもの、と碩の中で考える場合、そのという―つの提案である。(栽培の小草花)ばいも、都わすれ、おとめゆり、ひめゆり、ひめかんぞう、さくらそう、東洋蘭(洋種の小草花)。ハンジー、シクラメン、アネモネヒヤシンス、フリージャ、シプリペデゥムその他多い。思いついたままの花の名であり、その他に和花、洋花とも小さい潅木区別を系統立てて考えるのがよい、$ たとえば、盛花によく使う「立日陰」。これはヒカゲカヅラの種類のうちに、ツル状に生育しないで、直立性のものであり「立石松」といい、また「立万年杉」という学名があり全国の山地に野生するという。一般的な花材であるだけに知っておきたいところである。京都の北山でよく見かける「狸々ばかま」。これは全国的に山地に野生する短い春の草花だが、徳島の眉山で群落して暗紅色の花を咲かせていたのは、当然のこととはいいながら、私にとっては珍しく感じたものである。「貴船菊」という秋の草花も浩賀県の石山寺の境内で咲いており、白花と紅花とが入り交って開花しているのを見たが、これが意外にもスイスのレマン湖畔で栽培されており、全く花には国境の別がないことを現実に知らされたのだった。② 太祇の句に「花活に二寸短し富貴のとう」というのがある。二寸短しという言葉には実感があって、私逹花を活けるものには、ことに、その花の姿が思い起こされて、その寸法までしめされているのをみると、いよいよ現実感が深い。実際には茶花に「紅ふきの花」を活けることがあっても、いけばなに使うことは少ないのだが、早春のころ、庭のふきの、禍色の晉が土を割って出てくる姿は、いかにも春のさきがけの感じがして風雅である。水蕗、八つ頭蕗、秋田白蕗、安公山蕗など、野生の山の蕗の種類があり、渓流などに野生する鬼蕗など、京都の貴船などに群生しているのがある。ふきの名は富貴に通じ、早春の自然の花として、福寿草などとともに、昔からめでたい意味をもつ花として珍重されている。「人も馬もつつむばかりの大蕗のしげりのなかにわれは入り居り」という、斎藤茂吉の歌にある様に、秋田地方には時雨の笠に用いられるほどの大きさの蕗のあるのは有名である。春には寸法のみじかい潅木、たけの短い草花の類で、いけばなの材料に用いるものが多い。おもと、春岡、福寿草、クリスマスローズ、アネモネ、パンジー、ヒヤシンス、野菊、おだまき、その他の草花も多いが、低潅木、小潅木と呼ばれる、薮こうじ、岩かがみ、深山しきみ、たちばなの様に寸法の短いかんぼく類も多い。これらはいけばなの材料として、なんとなく使っているものでありながら、その自然に育っている姿や、その環境などをふりかえってみることが、案外、少ないものである。おもとは庭にあるものと普通は考えるのだが、野生に群落をつくって茂っているおもとの姿、秋、実の色づく頃には野鳥がむらがって、おもとの実をついばむという。あるいは谷川のほとり、杉ごけの浅みどりの中に一株、一株と立ちならぶ様に群生して咲く春蘭の花、これは清浄な霧の中に咲く早春の花である。これは花屋で見る傷のある春蘭の花とは、あまりに格差のある花の美しさをしみじみと感じるものである。薮柑子(こうじ)の赤く小さい実は、紅葉の葉の下につつましくみえ、春も深くなって狸々袴のにぶい紅色の花、狐のかみそりの朱色、初夏の山の花菖蒲、すいれん。こうぼねの黄色。四月のすえには川辺の草藤の紫の花。少したけ長いかんぼくには野生のこでまり(宝塚沿線滑荒神)花筏(はないかだ)京都大文字山。など、いずれも風雅な珠境の中に、咲く花である。私の家の庭に「クリスマス・ローズ」の花が二月に咲く。20センチ程度の短い草花だが、雪の降る寒い日でも、緑と視色の百合の様な花を咲かせている。クリスマスは現在、12日ときまっているのだが、その昔は冬至の祭であって、クリスマスローズの咲く頃に、クリスマスの降誕祭が行なわれたのだが、花の開花は正直にその季節をまもっている、ということになり、中々而白い。月24.25々ぃ専渓12

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