テキスト1979
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c三月のすえ、白木蓮がいっせいに咲きはじめるのを見るうちに、やがて桜の季節となり、また四月に入ると紫木蓮の花が赤紫の花に若芽の緑が色をそえて、この花にはひとしお晩春の季節感が深い。寺院の土坪から群がって咲く白木辿の花は実に見事に感じられるのだが、さて、いけばなの材料としては色彩に乏しく、老木の木蓮も変化があっても雅趣に乏しい。それに比較すると紫木蓮の索朴な木振りの中には色彩感があって美しく感じられる。ことに「からすもくれん」という、黒々とした紫の花など、さらに枯淡な雅趣が感じられるのである。写真の生花は「シモクレン」紫木蓮、一茄の生花。変化のない木振りだが枝を利用して組み合せると、意外にのびやかな作品とな冷やす)、この作品は約20分で作りあげたが、り、禄色に緑の若芽が配色よくおおらかな生花が短時間に出来上がる。枝も比較的柔かく、少し「火だめ」にして曲をつける。(ライターを利用して局部を焼き、曲をつけつつ全く簡単に出来上がった生花である。モクレンは四月初旬から中旬、それが終わるころカラスモクレンが咲く。若葉の緑の葉とともに咲く紫モクレン、カラスモクレンは色彩的に美しいeモクレンによく似た花木で山地に野生する「コブシ」がある。東北地方から九州に至る山木だが、樹林の中で白い花を咲かせて、山を歩く私達に思わず足をとめさせるのである。花の香りもよく木蓮とは迩ったわびしさがある。こぶしは中国にはなく日本の山野に野生する喬木で、モクレンとコブシはよく似ており、古くは生花材料として活けたものだが、最近はコブシも花屋で見かけない材料となった。ボク」が咲く。大きい白花、枇杷の葉によく似た光沢のある築、巨大な花と葉はいけばなの材料として風梢がなく使うことが少ない。白花の木蓮によく似た花木だが、庭園樹として植えられていることが多く、打、六月の頃、花を咲かせるが、これに大輪花、小倫花の二種があり、品格のよい花でいけばな材料としてよく用いられる。大峯山から吉野山中に群落をつくって咲くといわれるが、現在は天然記念物に指定されている。なものは以上の種類だが、木蓮という名とその風情から寺院の庭木として植えられていることが多い。白花のモクレンは三月の末に咲き、紫五、六月の頃、庭の樹木に「タイサン「オオヤマレンゲ」という花木がある。モクレンによく似た花木の中で一般的5紫木蓮(しもくれん)

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