テキスト1979
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Rコデマリ(小手鞠)は四月より五月へかけて咲くカンボク(潅木)である。二月ごろより温室咲きのものを活けるのだが、自然咲きのこのごろはのびやかに姿も美しい。この生花は上方の真、中段左方の胴、副材の椿が右方へ長く出ており、この三つによって花形を構成している。副と控にコデマリの軽い枝、また、胴の右下に軽く出ているコデマリの小枝、これらはいずれも補助枝といえる。椿は白赤交色の八重咲きの花で、シボリ」という種類である。たっぷりと入れた椿の留は右方へ長くさし出ており、この様に強い横線の用い方は全体の花形に力をつけ「イワネるために効果的である。真は右後方へ、胴は左ななめ前方へ対照的に枝をさし出しこのバランスが美しく花形を作りあげている。たっぷりとした花形であり豊かな感じをみせている。コデマリは一種挿し生花としても好ましく、また、都忘れ、すかし百合、バラ、など調和がよい。くばたとす、5んこのテキストの瓶花の写真の中に「エキスャ」について書いたので、古いいけばな材料で今日ほとんど見られなくなった「クマタケラン」を思い出したので書いてみる。ずいぶん古い頃の話だが、大正から昭和のはじめころの一般的な草花で、七、八月ごろの花材である。ミョウガの類でラン科に属する花。高さ2メートルほど背高い草本、カンナによく似た形で花は暗白色である。主として九州、琉球、台湾に野生するもの。京都では祇園祭のころ花屋で売られていた花で、そのころはこれを大きい生花に活けたものだった。ことに水盤の大きい花に入れたのだが、そのころの珍花とされていたもので水揚げはよくないが祇園祭の飾り花として金屏風の前へ活けてあるのをよく見かけた。毎年、そのころになるとあらわれてきた花だったが、古い友辿のように息われてなつかしい。(保育社版アオノクマタケラン山の植物3に所載)椿3生花コデマリ

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