テキスト1979
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Rこの月号のテキストの写真撮影は午後6時から午前1時までの間に、生花四瓶と瓶花盛花九瓶を作った。この短い時間のうちに生花四瓶は少し無理だったが、まずどうにか出来たような作品である。そのうちこの「シマバラン」の生花。前号にも記したように最近はバランはよい葉が少なく、葉と軸の堅くしっかりしたものが手に入りにくい。シマバランはことに柔かい葉性のものが多く、活けにくいのだが、幸いにも「生花百事」の写真撮影のためにとりよせたよい材料があったので、その葉蘭でこの写真をとることができた。左勝手行の花形の九枚の生花である。真、真がこい、見越、副、胴、留、留の沈み、総がこい、控、に一枚ずつ使っているのだが、留の葉が少し変関で腰が高く全体の調子を変えている。広口陶器花瓶で、この生花は剣山花留具に挿して留めた「水盤様式」の生花といえる。私どもの活ける桑原専慶流の生花は、花器もかなり自由に使って、いわゆる伝統の生花の花器だけではなく、瓶花用の花器のうち生花に調和のよいものは、かなり範囲を広げて利用することになっている。生花の特徴である株もとを揃えるという技法のために、中筒を使ってくばり木をかけることもあり、また剣山の使える花器には剣山を使って活け上がりの美しい工夫をする。このバランの生花には剣山花留具を使っているし、対。ヘージのコデマリの生花には銅の中筒を使ってくばり木をかけて活けてある。とにかく、生花の最も重要な部分である「水際」ミヅギワ、のである。を美しく作るための技法が大切なばらんには右の広い葉、左の広い葉の二種がある。用いどころによって左右の葉を選んで使う。また、大小の葉を適宜に用いる。留の沈み、控には特に小葉を入れる。くせのある葉を巧みに使うと変化のある花形が出来る。これが大切な技巧である。剣山の場合には足もとを揃えるのがむずかしい。マタクバリで入れるほうが、むしろ技術的に楽である。2 生花.シマバラン九枚(行の花形)

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