テキスト1979
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R淡紅の桃、太い幹からわかれてのびた枝を切りとって、十五本ばかりあつめて立体調に花瓶に挿す。美しい八重咲の桃の花、頭を揃えるように低く挿し左右へひろげる。白花のスイセン、。フレス」という。白色の花に透明感があり美洋種のスイセンで「エンしい。足もとに赤椿を添えてみずぎわをととのえる。それほど変った配合ではないが、洋花のスイセンを加えたことが、この瓶花を明るく感じさせている。花器は淡いグレーの広口の花瓶である。特に「飢祭のいけばな」とことわらなくても、普通の瓶花だが、三月のはじめの季節感のあるいけばなといえる。たっぷりと豊かな感じのある瓶花であり、朴の花ののどかな美しさが憾じられる。雛夕又三月のひな祭は、女の子をもつ家庭のロマンである。お家に代々伝った古い雛人形を飾って、なんとなく浮きうきとした春を迎える気持は、いかにも幸せな子供逹の夢といえるだろう。多忙な家庭生活の中に季節の折々にめぐってくる四季の行事は、なんとなく心豊かに感じられるものである私の子供のころ、友逹のお舛祭に招かれて臼白小僧が四、五人、窄やかに飾った赤いE椛の祭厨を背景にして廿洒と、なんとなくあらたまった御馳心をいただいた思い出は、幾十年を経た私の心の中にっているのである。さて、おひな祭に桃の花を活けるのが古来の羽曰叩いになっているのだが、これは中国の風晋が日本に伝わったもので、桃は子供を盗みにくる悪魔、悪霊を追い払う仙木という信仰と形式が、ひな祭の中にとり入れられ、今日においても桃はひな祭の花ということになっている。桃の花をあつめて洒をつくり、これをのむと百病を去り美人になるという伝説もあって、女児の祭である伍祭に桃を活ける羽I慣が始まった、という説もある。とにかく、桃を主題にして活ける今日のひな祭のいけばなは、なぎ、つばき」などの古風な配合ではなく、今日的な明るさと美しさが欲しいものと山心う。そんな気持をもって活けたのが、写真の瓶花である。先口のNHKのテレビで芥川也寸志氏による「饒の存より」というのがあった。「ささやきは雛の声、存の夜つづく難の語らい」という歌詞があったが、明るい現代調の歌声に新しい慇銘をうけたのだった。―つの印象として残「紅桃、れんぎょう、やJ2フJヽの花R 紅桃洋水仙赤栴

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