テキスト1979
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専渓早春の二月より三月、猫柳のふくらむころになると、冬より春へのうつり変わりをひとしお深く感じるのである。誓子の旬にネコヤナギ「激つ瀬は又猫柳てるラッ。ハスイセンところ」というのがあるが、渓流にそうて野生の猫柳がひと株ひと株と見えて、銀色に光った実が、激しい流れと岩石を背景としてつっ立っている情景は、早春の写実的な詩趣といえる。比良の渓谷、石切場から琵琶湖へ流れ込む渓流でよく見かけた風景であった。猫柳にも種類が多い。最近、園芸種の変わったものもあって、赤芽柳、青芽柳、銀芽柳などと花屋へゆくと品種がいろいろあるようだが、実の外皮の落ちるころ、つぷらに大きくふくらんだ実が、水辺に立ちならんでいる姿は野趣があり、また、いけばな材料として他の花を添えて活けると、野生の低木とは思えないほどの新鮮さを感じるのである。ことに面白いのは、温室咲きの洋花にとり合せてよく調和することである。カーネーションの赤花、ラッパスイセン、洋蘭の類、フリージャなど意外によく、新鮮な感じの盛花瓶花が出来る。ヵュウ、かきつばた、すかしゅり、バラ、アイリスなどともよく、この猫柳の野趣がすっかり印象をかえて、明快な材料になってみえるのも中々腿味深い。掲載の盛花は、ラッパスイセンとの配合だが、銀色に光る実と淡黄色のスイセンとの配合に早春の新鮮さが感じられる。月に活ける. 毎月1回発行桑原専慶流No. 188 編集発行京都市中京区六角通烏丸西入桑原専慶流家元1979年2月発行しヽけばな

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